2016/07/03 ストリップとの出会い、広島第一劇場

広島第一劇場が閉館となるのを聞いたのは、6月の末のことだったか。
第一報を見聞きした方のツイートでその件を知る。
RCC中国放送アナウンサーでもあり多方面で活躍する横山雄二氏の映像作品である「浮気なストリッパー」や、自分の生まれ育った街にストリップ劇場がかつてあった等、割と見聞きすることの多い言葉ではあったストリップ。
そして私自身が、女性の身体の美しさや神秘性に魅せられており、身体で表現するストリップというものを一度は観てみたいと思っていた。
現在の居住地から一番身近にある劇場は広島第一劇場。
正直、閉館を知ってから足を伸ばすのは、個人的な経験からされて良い思いはしなかったので気が引けた。
が、この機会を逃すと一生後悔するかもしれない・・・そう思い、2016年7月3日、広島市内へと足を運んだ。

1年ぶりの広島市内


広島市に来たのはちょうど1年ぶりということもあり、最終的な目的は劇場へ行くことにせよ、まずはイングレスでミッションをこなしつつ簡単に観光を楽しむ。
昼頃までは強い陽射しだったが、天気予報ではこれから夕立が来るそうで、お隣の山口では既に激しい雨が降っているとの報せ。
確かに西の空が重い雲に覆われており、まだ陽射しはあるものの、遮断されるのも時間の問題のようだ。

広島駅ビルASSE2階にあるお好み焼き「麗ちゃん」にて、もちチーズそば入りを食べる。
大学の地方受験終わりに食べて以来、広島に来たら毎回のように食べる定番のお好み焼き。

食べ終わり、いざ劇場に向かおうと外に出ると、すっかり雲に覆われている。
広島駅前から銀山町で下車する僅か数分の間で、雲行きが更に怪しくなる。時折、雨粒が落ちてくるもののなんとか持ちこたえている状態。
早く向かおうと広島第一劇場のサイトで道を確認しながら進むも、初めての道に少し迷い、到着したのは15:45頃だったか。


広島第一劇場の外観を見て、少し後悔をした。
「なんて入りにくい雰囲気をしているんだろう」
外から受付らしきところを見ても、人がそこにいる気配はない。これは引き返すべきではなかろうか、ちょっと無理だ。
でもこれが目的で来たのだ。ここで観なきゃ一生後悔する・・・でもこれはさすがに。

夕立に背中を押され


劇場前で少し膠着していると、雷鳴とともに大粒の雨が零れてくる。
傘はない。雨宿りしようにも目の前の劇場に入るしかない。
夕立に背中を押されて劇場のロビーへと入り、初めてでシステムが分からない旨を告げて、簡単な説明を受け5000円を支払う。
常連客と思しき面々がロビーでくつろいでいるので開演はまだなのだろうと、手持無沙汰にスマホを取り出し時間をつぶす。

「そろそろ開演なのでお入りになってお待ちください」とスタッフに告げられ、ドアマンのようにドアを開けて下さりいよいよ中へ入る。
席は選り取り見取りだが、人が集まっている箇所は中央部分なので、取り敢えずその外縁部に座る。

テレビでマジックショーをしている時に流れる典型的なBGMと、開演前の注意を告げる女性の声。
回転するミラーボールから発せられる光の粒が舞台のカーテンを駆け巡る。
「エレガントで、エキセントリックなパッションステージ」の言葉とともにBGMの音量が上がり、曲が終わると暗転。

よく見えないものの、最初のステージを飾る踊り子が準備をしている姿が何となく見える。
男性の味わいのあるアナウンスで紹介を受けたその踊り子が、私の初めてのストリップ観劇となった。

未知なる世界の幕開け


ストリップに対するイメージとは、加藤茶のアレだったり、「まな板ショー」等をイメージとして持っている方が多いという。
私はまな板ショーについては全く知らず、まぁムーディーな曲とともに身に着けているものを脱いでいくんだろうと思っていた。

今、聴いたことのあるアニメの曲に合わせて踊っている。
ムーディーな曲ではなく、衣類がセクシーなわけでもない。よくある?ステージ衣装風の衣装だ。適当な言葉が見つからないが、失礼を承知で敢えて言えば簡単な出し物のように感じた。

曲が終わると暗転し、ステージの外へと足早に消えていった。

「ストリップだからと言って脱ぐばかりじゃなくて、ダンス専門の人もいるのか」と早合点していたら、衣装を変えて再登場。
着替える時間にしてはあまりにも短かったため、次の方が登場したのかとも思ったのだが、それなら紹介を受けるはずで、ならば同一人物だろうと。

再登場してから曲の終盤になるといよいよ服を脱ぎだした。
裸体に対するエロスではなく、その躍動感や動きに目が釘付けとなってしまった。
何と表現をすればよいのか、自分の語彙力ではどんな言葉もしっくりこない。
ただ、今、自分は凄い世界に足を踏み入れ、もっともっとこの世界を知りたい、そんな衝動に駆られた。
すっかり魅せられてしまった。

曲が次の曲へ変わっていくと共に、徐々に過激なポーズをとるようになる。
観客の拍手のタイミングなどのしきたりらしきものに対応できず、ただ眺めるだけに終始した。

その後にあったポラロイドショーでポーズを指定して写真撮影ができるというシステムに驚かされつつも、観客の要望に応える姿やその表情の、舞っていた時とのギャップがさらに興味を引き付けた。
さすがに初っ端から写真を撮ることができるほど度胸がある男ではないので、その日は撮らずじまいだった。

オープンショーと銘打たれたショーでは、楽しそうに舞い、一礼をして舞台袖へと去って行った。

その踊り子の名は、天河はるひ嬢。
もしここで良い印象を与えてくれていなかったならば、ストリップに対する好意はなかったかもしれない。
最初に出会った踊り子が彼女だったからこそ、今日の私が存在すると言っても過言ではない。
いつかご本人にポラの時にでも、直接その感謝を伝えたい。

次に出演した踊り子は有馬美里嬢。
先ほどとは異なり、ムーディーで、アダルトで、レトロな雰囲気を醸し出す演目に、再び釘付けとなる。
どちらが良いか悪いかではない。
ストリップとは幅広い道であり、その道から逸れていなければ、どのようにその道を渡っていくかは踊り子が決めるものなのだろう。
大きく毛色の違ったその演目を見て、そんなことを感じていた。

こういった風俗業に従事する人に対して、性を売り物にすることに、よく言えば大らか、悪く言えば緩い印象を正直持っていた。
だが、ポラロイドショーでツーショットを撮る際に、客の尻を触る手を波風を立てることなく払いのけている。
そういうことが御法度になっている業界だからというのもあるのだろうが、決して自分を安売りしているわけではないという、芯の強さというべきか気高さというべきか、そんな姿を見てなおこの世界に惚れ込んだ。

3人目は瀬能優嬢。
聞き覚えのある洋楽と共に、派手な色の、演舞用の衣装と言えばいいのかな、あの衣装がどういう名称なのかを知らない自分の無知さが恥ずかしいが、洋というより和の衣装で登場。
派手な衣装に負けないくらいに明るい髪で、これまた若い人が演られているんだなぁと観ていた。
ただ、素人目にも、ダンスの上手さが際立っているような、動きの隙の無さというか、鈍感な私が達者な方だと感じるくらい素晴らしかった。
終盤にかけてリボンが投げ込まれる。当然投げっぱなしではなく、即座に回収。
従業員の方が演出としてやっていると思いきや、ファンがされていたと後に知る。

驚いたことに、後に色々と調べてみたところ、想像していた年齢よりも一回り違ったことが判明。
人に見られる仕事だからこそ、あの若々しさを保てている節があるにせよ、元々の持って産まれた遺伝子のレベルで桁が違うんだろう。
中学生の時から公営競技場に出入りできていた自分との対比で、羨ましく、そして悲しくなった。

最後の登場は藤咲茉莉花嬢。
綺麗な方で、一つ一つの動作が、そして表情が優しい。
活発に動き回る演目ではない分、曲・歌詞と結びつく一挙一動に心が奪われる。
くるりと回転したときにフワッと漂う香りもまた優しい。
観ていて優しい気持ちになる。心が浄化されていく。

始まりの、始まり


演目が終了した時の時刻がちょうど帰りの高速バスに乗るのに良い時間だったので、ポラロイドショーを待たずして館内を後にする。






雨は上がり、空が少し明るさを取り戻している。
なんて良い時間を過ごすことができたんだろうと清々しい気持ちで薬研堀からバスセンターへと向かう。
この新たな出会いが、近頃の陰鬱とした日々の袋小路を切り裂いた。
足取りが軽い。
また来週も来よう。次は最初から居れるだけ居よう、そう決めた。
これがストリップとの出会い。

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